2013 4/20 出力8Wと小出力なれどその音質は銘刀の切れ味、量より質を重視した設計は既製品のアンプでは味わえぬ逸品
鋭敏なタッチ、倍音を十分含んだ響き、
古いストラトキャスターが紡ぎ出す音味、
出力こそ小さいですが、魅力はプロトタイプ
EX-A10
を凌ぎます、
大変満足しております。
2013 5/1
ギター演奏において、人に感動を与える音楽シーンを味わうには、
1:ギター名手、即ち鋭い感性と演奏技量を持ったギタープレーヤー、
2:楽器、銘器と言われるギター、
3:アンプ、それらを最終的に実際の音にしてくれる優秀なアンプ、
これら、名手と選りすぐられたギターとアンプが揃い、三味一体となった場合初めて体験出来ます。
ギタープレーヤーは日頃から信頼を寄せている友人の
名手S君
です、ギターは彼の所有する名器
Gibson L5、
アンプは今回完成したアンプ
【 Guitar Player 8S 】
による共演です。
S君はWesスタイルのJazzギターですから音色はクリーンです、アンプの方はマスターボリュームを全開とし、音量調整はトップボリュームで行います。
いやあ〜素晴らしいです、S君はこの鋭敏なアンプを彼の肉体の一部の如く操ってくれます、湧水の如く溢れ出るフレーズ、名手あってのギターでありアンプです、S君も「ここまで鳴るとは・・・思った通りの音が出る、予想を遥かに上回るアンプです」と賛辞を頂きました、このアンプは暫くの間S君に預けておく事にします。
シングルアンプの代表と言えば、何と言ってもフェンダーのチャンプでしょう、内容もギターアンプでは最も単純です。
6V6のシングル(5W)に12AX7の電圧増幅の構成でトーンコントロールも省略されております、操作出来るのはボリュームと電源スイッチのみで、これより簡単なアンプはありません。
ところがこのチャンプ、結構人気があるのです、理由は大型のアンプには無い音の良さにあります、
内容が簡単であるが故、自作アンプには最適で初めてハンダコテを持った初心者でも制作出来ます。
電機知識など皆無の初心者が初めて作ったシングルアンプ、出てきた音の良さに感激し「ひょっとしてオレはアンプ作りの名人かも・・・?」等は冗談抜きでありうる事でしょう。
では、シングルアンプの音の良さを説明して行ましょう。
右(→)の波形はEL34シングルアンプの最大出力時のものです、
この時の
歪率(歪率とは歪の無いサイン波がどの程度変形したか?と言う事です)
は10%に達しております。
ところが波形を見る限り別に醜く変形しておりません、(半導体アンプでの歪率10%は悲惨な波形となる)強いて言えば上側が広く下側が狭くなっております、専門的に申しますと第2調波歪と言い、プッシュプルのアンプではこの第2調波歪は打ち消し合って消滅するのですが、シングルアンプでは真空管自身が持っている特性がそのまま出て来ているのです。
この歪は基本波と同調する関係にあり、耳には心地よい響きとなって聴こえます、あたかも響き増量のエフェクターとでも言いますか、偶然に真空管の特性が良い方に働いた結果であります。
(参考文献 パワーアンプの設計(上巻) 武末数馬著)
この性質があるがため、
「シングルアンプでしか聴けない響きがある」
と言う結論に達する訳であります。
真空管自身が持つ固有の特性が響きの性質を支配するならば、真空管の銘柄、例えば6V6、6L6GC、EL34、等それぞれに音質が変化するのは当然の結果であり、同じ銘柄であっても製造メーカーによっても異なる音質となります。
凝り始めると音の良い真空管探求という病にかかります、しかしそれも又楽しいものです。
歪の性質が音質を支配するのはシングル、ギターアンプに限りません、例えばバイオリンの最高峰、ストラディバリウスは基音に対して歪の成分が美しく配列されております。
シングルアンプはアコースティック楽器と一脈通じるものが御座います。
シングルアンプは誤魔化しの効かない性質を持っております、まず雑音に対しては十分に配慮しなくてはなりません、ヒーターハムやリップル(DC電源に混入しているハム)は顕著に現れます、プッシュプルのアンプではリップルは打ち消されますが、シングルでは入念にリップルを排除しなくてはなりません、結果電源部のチョークトランスは不可欠です、安易に抵抗によるπ型フィルターなどと妥協をしてはいけません。
シングルアンプは0信号時と最大出力時の電流変化が少ないのが特徴です、したがって整流には内部抵抗が比較的大きな整流管が使用可能となります。
シリコン整流器と整流管の比較では、内部抵抗に関しては圧倒的にシリコンが有利です、では整流管のメリットは整流ノイズが皆無な事です、シリコン整流ではスパイク状のノイズが発生しておりますが整流管にはそれが全く存在しません、これはシリコンが如何に高速整流を行っても整流管には敵いません、整流管はシングルアンプとの相性がピッタリです、この整流管もアンプと電源が直列の関係にあるシングルアンプでは銘柄によって微妙に音質が異なります。
シングルアンプはとかくギターアンプ制作の入門用と扱われがちですが、今回制作したアンプはその様な考えは全く排除いたしました、何処にも妥協しないシングルアンプであります、シングルアンプの特徴を最大限に活かし制作コストは考えない事にしました、出力はKT66で6.5W、EL34で8Wです、制作コストの割には低出力であり、極めてコストパフォーマンスの悪いアンプです、例えばGECのKT66は一本2万円以上の価格であります、このアンプに使用している真空管の価格だけで結構いいアンプが購入出来ます。
ネックを握っただけでもう只者で無い事の予感を感じます、怖い位の鋭いタッチ、微妙なピッキングを克明に表現、又相反するロングトーンの太く重圧な響きの層、ここまで表現出来るアンプとなるとプレーヤーは全く誤魔化しが出来ません、はっきり言って下手は使いこなす事は不可能でしょう、エフェクターやコンプレッサーに慣れた方はこのアンプの鋭いクリーントーンには恐怖を覚える筈です、しかし、名手の手に一旦渡るやこのアンプは未知の表現力を展開してくれます。
このアンプに命名いたします、Model 【 Guitar Player 8S 】です。
スピーカーはジェンセンP10R
小出力ギターアンプには最適です。
GOOD・ALLのカップリングコンデンサーです、
後のTRWで現在はASCの前身であります。