65TWIN REVERB改造記


ステージの大音量から、家庭練習まで

 フェンダーを代表するアンプ、65ツイン・リバーブです、コンボ・タイプながら85Wの出力を誇ります。

 元来が相当広いステージ用に開発されたものです、このツイン・リバーブを家庭で使うには実に都合が悪いんです、出力の大きさとゲインの高さには全く持て余してしまいます、このツイン・リバーブを所有している方はこの問題に苦慮している筈です。

 ツイン・リバーブを家庭に持ち込むという事は、裏庭でF1カーを走らせている様なもので、本来の機能を発揮する以前に、その特徴的な機能、ハイ・ゲイン、高出力、は邪魔になってしまいます。



【 アッテネーター、or マスター・ボリューム、】

 家庭で使用するには、ハイ・ゲインと高出力を落とさねばなりません、対策として2つの方法が考えられます、第一はアンプとスピーカーの間に電力型アッテネーターを使用する方法、第二はマスター・ボリュームを増設、が考えられます。

 アッテネーターは、ツイン・リバーブの出力が85Wの高出力であるため、相当大型の物が必要となります、当然相当高価なトランス型が必要となり、あまり賢い方法では無いでしょう。

 マスター・ボリュームの増設はボリュームを1つ増設するだけで、容易かつ低コストで実現出来ます、したがってマスター・ボリュームの増設を選びました、ただし、注意点はゲインの調節は可能ですが出力の低下は不可能です。

【 マスター・ボリューム、増設 】

 マスター・ボリュームの増設は、プリ・アンプ部とパワー・アンプ部の間に設けるのが常識的な方法でしょう、回路は図1の様になります、フェンダーのマスター・ボリュームもこの回路を採用しております、この方法であれば、あえて公表する程の事柄ではありません。

【 Grid式、マスター・ボリューム 】

 今回ボクが増設したマスター・ボリュームは前代未聞の方法で、ツイン・リバーブのみならず、ハイ・ゲイン、高出力のアンプ使用の方で同等の悩みを持っている方には朗報となる思われます。

 マスター・ボリュームの配置はパワー・アンプ部のドライブ段(12AT7)と、パワー菅(6L6GC×4)の間に設けます、ボリュームはPP回路部分ですから同軸2連の物が必要です、回路は図2の様になります。

 このボリューム増設の注意点は、まず第一にパワー・アンプ部にかかっているNFBを外す事です、NFBループ内でのゲイン可変はご法度です。
 第二はボリュームの定数値の決定です、パワー菅から見れば数値は低い方(グリッド電流による暴走)が良く、ドライブ段から見れば負荷抵抗と並列になるため、無闇に低くする訳にはまいりません、 ボリュームは200KΩ2連(B)を使用します、従来の出力菅のグリッド抵抗を基盤より外しボリュームに置き換えるのがベターなのですが、面倒なのでグリッド抵抗と並列にボリュームを設置します、ドライブもこの程度の負荷であれば全く問題なく働きます。



 ボリュームの配置はスピーカー・ジャックの予備を外し、その穴にボリュームを配置しました、したがってマスター・ボリュームの調整は後面になりました。


マスター・ボリュームの増設、実態配線図です、解りますでしょうか?。。




【 Grid式、マスター・ボリュームのメリット 】

 Grid式、マスター・ボリュームのメリットは、従来のマスター・ボリュームでは不可能だった、オーバー・ドライブ、ディストーションが簡単に行える事です。
 元々のボリュームをゲイン調節とし、マスター・ボリュームを音量調節としますと、ゲイン調節でオーバー・ドライブを発生させますと、マスター・ボリュームの前段であるドライブ段が歪を発生させる事か可能です、これは実に好都合でクリアー・トーンからディストーションまで可変が可能となり、エフェクター不要であります、歪の性質も12AT7の自然なクリップ波形ですから音質は大変良好です、音量調整も家庭で使用しても実にスムースに行えます。
 ステージでの大音量で使用の場合は、マスター・ボリュームを全開にする事によって、元来のツイン・リバーブに戻ります。
 ステージの大音量〜家庭での練習までカバー出来る様になりました。

 注意 : 当方、Gridは営業活動を行っておりません、アンプの改造等の仕様は公表いたしておりますが、施工は信頼の出来る楽器店もしくは腕のいい工房に依頼して下さい、不明点はBBSに書き込んでください(公開、非公開、は応じます)


【 真空管をグレード・アップ、音の厚みとキレの両立 】

 ツイン・リバーブ改造記、最後の仕上げは真空管をグレード・アップします。
 NORMALチャンネルのプリアンプ部の12AX7は6072/12AY7に差し替えます、フェンダーの12AX7の定数、RP=100KΩ、RK=1.5KΩ、は12AX7の動作例としては比較的低負荷であり、この定数であれば6072/12AY7の方が好条件で動作いたします、最初期のフェンダーはこの定数で6072/12AY7を用いておりました、また、当時の6072/12AY7は実に良い響きを出します、バイオリンに例えるなら音色に厚みと倍音が心地よく乗り、楽器のグレードが数段上がった感覚と良く似ております、この音色の差はスペクトル・アナライザ(音の成分を分析する測定器)があれば数値として確認出来ると思われます。( 参考資料、6072/12AY7参照)

 次にパワーアンプ部の6L6GCをドライブする12AT7の交換です、ここは12AT7のスペシャル・チューブ、6201/12AT7に交換します、この6201/12AT7はあえてアメリカ製にこだわる事はありません、国産の東芝はこの球に関しては良い製品を作っておりました、プレートは黒ニッケルでピンには銀メッキが施されております、尚、ここでの音の違いはプリアンプ部程の大きな変化ではありません。


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